以前、当ブログにて紹介をしたクリエイター漫画「左ききのエレン」。先日cakesでの連載が完結し、現在はリメイク版が少年ジャンプ+で連載されています。
「左ききのエレン」の作者である漫画家のかっぴーさんは、広告漫画も多く描かれており、このブログでもチラホラと紹介してきました。
これまで1ファンとして、かっぴーさんに会いたい会いたい!と話していたわけなのですが、なんと今回、かっぴーさんが当ブログの取材に応じてくれました!!
まさかこうやって、会いたい人に会える機会が得られるとは。このブログを運営してきて良かったことの1つですよ、ほんと…!
というわけで、「ゆるかし!」初のインタビュー記事として、かっぴーさんの特集をお送りいたします。ありがたいことに、約2時間半に渡るロングインタビューとなったため、前編後編にわたってお伝えしていきます。(後編はこちら)
「左ききのエレン」についてや、他の作品について、かっぴーさんの独立経緯など、幅広く伺ってまいりましたので、エレンファンやかっぴーファンの方も、まだ良く知らないという方も、これを機会にぜひ読んでみてくださいね。
※「左ききのエレン」についてはコチラをどうぞ。
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「左ききのエレン」はどんどん進化する
ーーかっぴーさん、今回はよろしくお願いいたします!こういった個人の取材を受けられることって、これまでありましたか?
かっぴー いや、ないですね(笑) ただ、以前(当ブログの)記事を見ていたので、OKしました。よろしくお願いします!
かっぴー(本名:伊藤大輔)1985年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店を経てWEB制作会社に転職。制作会社時代、ネットに投稿した漫画が話題を呼び、2016年2月、漫画と広告を手がける「株式会社なつやすみ」を立ち上げ独立。cakesにて連載したクリエイター漫画『左ききのエレン』がまたも人気作となり、今年10月から少年ジャンププラスにて絶賛連載中。その他、『SNSポリスのSNS入門』(ダイヤモンド社)、『おしゃ家ソムリエ おしゃ子!』(大和書房)など多くの漫画作品を描く。
ーー「左ききのエレン」が終わり、同時にジャンプ+での連載がはじまりました。今のご心境はいかがですか?
かっぴー エレンが終わったあとかぁ…。ぶっちゃけると、ジャンプ+のことで頭がいっぱいでした。性格的に終わったことはあまり考えないタイプなので、次のことばっかり考えてました。ジャンプは自分がずっと読んでいたから、そこに載るって思ったら実はめっちゃ不安で。作品を通して自分の恥部を晒すわけだし(笑)
でも不安でこわいってのもありましたけど、あとはやるしかないって感じでしたね。
ーーかっぴーさんでも不安だったんですね…!作画のnifuniさんとの仕事はどうですか?
かっぴー めっちゃやりやすいです!元々エレンのファンでいてくれたこともあって、「このシーンはこう書くと良さそう」みたいなところもよくわかってくれてる。絵がうまい人も漫画がうまい人もたくさんいるんですけど、nifuniさんの絵はほんと魅力的です。
nifuniさんは漫画描くの初めてなんだけど、僕も商業雑誌のストーリー漫画は初めてだから、お互い素人なんです。だから本当1話目はやばかったんですよ、素人しかいないから(笑)
そんなこともあって、今後は良くなるしかないんです。実際ものすごいスピードで良い方向に変わってますし、そのあたりは僕もめっちゃ楽しみです。
少年ジャンプ+「左ききのエレン」作画nifuniさんの描くエレン
ーー読者としてもすごく楽しみです!ちなみに、1話の段階で既にみっちゃんがかわいいです。エレンにはたくさんのキャラクターが出てきますが、みんな魅力的ですよね。
かっぴー みっちゃんかわいいよね。あんなかわいい女の子描けないからなぁ、僕は(笑)
キャラの増やし方はうまくいったなぁと思ってて。でも最初から決めてたっていうより、書いているうちに増えてったんです。役員クラスが全員集合したところなんかは漫画っぽかったなー。
あと前に人気投票をやったんだけど、やっぱり流川は人気ですね。これからスピンオフを描いていく予定なんですが、少なくとも流川は描こうと思ってます。
流川 画像元:「 大義か恩義か選ぶんだ」左ききのエレン|46話
ーー流川かっこいいですからね。かっぴーさんご自身は、好きなエレンのキャラっているんですか?
かっぴー どうだろう。そのとき描いているキャラが好きっていうのはありますね。あ、ルーシーはめっちゃ好きです!描いてても楽しいし、友達になりたいタイプ。自分が仲良くなるとしてもルーシーでしょうね、キャラ的に。でもあんまり出てこないから寂しい。
あと女性キャラクターで言うと、ユウコとかは実際にいたらモテるでしょうね。あとは…園宮ちゃんが好きですね(笑)
ルーシー 画像元:「 五番街のヘラ」左ききのエレン|30話
ユウコ(上)と園宮ちゃん(下) 画像元: 「 置いて行かれた悲しみは」左ききのエレン|56話
ーー園宮ちゃんわかります(笑) やっぱり光一はかっぴーさんご自身に近いキャラクターなんですか?
かっぴー そうですね。まぁ同族嫌悪みたいな感じもありますが、光一が影響受けやすいように、自分も影響受けやすいんですよ。
影響受けやすい人って同年代とか下から見ると、「なんだこいつ」って思いますけど、振り返ってみるとみんなそうなんですよね。だって若い頃なんてそんなにみんな確立してないもん。やっぱかっけーって思う人は真似しちゃうはず。それを直視すると「だっせーな」って思うんだけど、冷静に考えると「俺もそうだな」っていうのはきっとあると思う。
実際、以前昔いた代理店から仕事もらって、打ち合わせで営業の人にあったら「かっぴーさんの尊敬してた上司にすごい似てきたね!」って言われたことがあって。
だから良くも悪くも似てきますよね。すごい人って影響力凄いから、「この人から仕事盗まなきゃ」って思っているうちに、どんどん近くなる…っていうのはあります。
エレンでも上司として神谷が出てくるけど、「神谷みたいなこんな良い上司いねーよ!」って言われるのが逆にすごい嬉しいです。本当にいたんですよ俺の上司に!って(笑)
神谷 画像元:「 やっぱりお前に勝ちたい」左ききのエレン|42話
ーーこんな上司いねーよ!って私も思ってました(笑) 描いてて楽しかった場面とかはありますか?
かっぴー 連載当初から「これは描こう!」と思ってたとこはいくつかあって、それはすごい覚えてますね。ルーシーが走り出すシーンとか。
画像元:「 バンクシーのゲーム 中編」左ききのエレン|34話
かっぴー まぁ描きたいシーンの話で言うと、ジャンプ+がすごい楽しいのは、見開きが書けることです。今まではcakesとKindleしか出所がなかったから。紙の本じゃないと見開きの意味がないじゃないですか。だからやっと見開き書けるなぁと思って。今後はもちろん単行本化していくから、それも楽しみです。
異色なキャリアだからこそ思う、成功者の心の広さ
ーーそういえば以前、当ブログで「もしエレンが実写化したら~?」という記事を勝手に書いてしまったのですが、仮に実写化の話になったとき、イメージされている役者の方っているんですか?
かっぴー うーん…いや、マジでないんですよ!でも、実写化…実現してほしいなぁ。それだけが生きる望みですよ。エレンの映画なんて見たら俺、死ぬんじゃないかなと思ってるからね。試写会で絶命する可能性ある(笑)
ーー作者としては嬉しすぎますもんね。(笑) 余談なんですが、ジャンプ+でいうとかっぴーさんがTwitterでおすすめされていた「終極エンゲージ」、おもしろくて買っちゃいました!
ほんとですか!作者の江藤俊司先生はすごいお世話になった人なんですよ。エレンの1話目を公開した日もずっと連絡してて、「読者の反応こわいんですけど!」なんて話し聞いてもらってました。実はエレンの連載が決まったのも江藤先生のおかげなんですよ。終極の打ち合わせのときにエレンのことを編集担当に話してくれて、その場で連絡くれたんです。
江藤先生のように、漫画家で読んでくれてる人が多いのは本当ありがたいです。僕は正しいルートで漫画家になっていないので、ちゃんと持ち込みとかしてた他の漫画家さんにどう思われるのか、そこは心配だった。
なので漫画家の方が「かっぴーの漫画は良い」と言ってくれると、本当に良かったなと思います。許されたな、と。だって俺が逆の立場だったら嫌いだと思うもん。成功してる人は心広いですよ。心広い人に救われたなぁと感じますね。
ーー確かに普通とは異なるデビューでしたし、そんな思いがあったんですね。ちなみにかっぴーさんの一番好きな漫画って何ですか?
かっぴー 一番好きな漫画は「昴」なんですよ。あれがベストになるかなぁ。あとは「プラネテス」とかも好きだけど…、でもまぁ「HUNTER×HUNTER」も好きだなぁ。「バクマン」も好きだし。…もう、みんな好きです(笑) でも最近はあまり1つの漫画を見すぎないようにしてます。変に影響を受けちゃうと嫌だから。
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連載当初を振り返って
ーーあらためてですが、連載当初を振り返っていかがですか?
かっぴー エレンは連載当初、誰にも求められてなかったですからね。ファンの人にすらギャグ描けよって思われてたと思う。
今思うと自分の性格で良かったなぁと感じるのは、あんな状態の絵で連載するかね?ってとこじゃないですかね(笑) 普通あんな感じの絵だったら、ギャグ路線にするというか、ちょっとスカしますもん。
ーー確かにもともとギャグ漫画のイメージでしたもんね。
かっぴー そうそう。「なんちゃって」みたいな感じでやるのが、あの絵は合ってるんですよ。だからそれまで書いてたような二頭身のかわいいキャラクターが広告代理店でわーっとやる漫画でも良かったんです。
なのに、バカ正直に何の恥ずかしげもなく、エレンはちゃんと真面目な漫画にしちゃったじゃないですか。真っ正面から正装して入ってったというか、ブサイクなやつが蝶ネクタイしめて、バーンとパーティー会場に入ってきたというか(笑) っていう状況なんで、それができる性格で良かったなぁと思います。普通の神経ならできないからね。
画像元:「 オレは、オレの事ばっかりだ」左ききのエレン|第1話
ーー(笑) でもどんどん絵が変わりましたよね!
かっぴー 少し上達しました(笑) あのへん(連載当初の絵)を耐えきった人たちが読み返すと、「こんなときあったよねー」みたいな風に言ってくれるんですが、やっぱ初見でブサイクの蝶ネクタイのやつを見たら、まじか…って思うのが普通だと思いますね。
というか、絵はマジでうまくないんですよ!なんだろうな。味が出てきたのはあるかもっていうか、うまくはないです(笑)
ーー今後またギャグ漫画も描いていくんでしょうか?
かっぴー もうエレン書いちゃったから、逆に今ギャグ書くとまた変な感じになると思います。「おしゃ子めっちゃうけるー!」みたいなのはもう無理です(笑) だから今後ギャグ漫画の出し方は気をつけなきゃなと思ってて。このあとギャグ漫画書くとしたらかっぴーから名前変えるかもなー、楽しそうだし(笑)
ーーエレンにはシリアスな場面もあるので、当初「読むと鬱になるw」なんて意見もありましたよね。
かっぴー 人によってはね(笑) まぁシーンにもよるんじゃないかな。ジャンプ+では今まだ数話だけじゃないですか。だからかなり暗い漫画だと思われてるかもしれないですね。「天才になれなかったすべての人へ」っていう言葉がちょっと悲劇っぽい響きがあるから、そう思われる可能性あるなぁって。
画像元:「 がんばったで賞なんて無いんだから」左ききのエレン|第10話
でも、ちゃんと全部読み切ったら鬱にならないんじゃないかな。読んでる側からするとつらい時期長いんですよ。だからほんと、耐えて欲しいなって思う(笑) 結構読者に強いる作品だから、全部読み切った人は「よくぞ完走してくれた!」とありがたく思います。
ーー確かに原作を読んだ人間からすると、最後素晴らしかったです。これからの取り組みについてはいかがですか?
かっぴー まずはジャンプ+ですね。さっき話したようにこれからは全部初めてだから、良くなるしかないですよ。それと、理想としてはエレンの続編は書いていきたいですね。先日のcakesの記事でもあったように、2章は考えてます。エレンは63話で終わりましたが、始まるとしたら64話からで始める予定です。エレンはライフワーク的に書いていたいな。
(後編へ続く)
後編ではエレン以外の作品や、独立されたときのお話について伺っています。
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